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9話 無双の共闘、前衛そらと後衛ティナ

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-12-25 12:40:54

 圧縮された炎のエネルギーが、彼女の杖の先端に集中し、一瞬で巨大な火球へと変化した。

 グオオオッ!

 ティナが放ったファイアボールは、もはや火の玉というよりも、巨大な太陽のミニチュアのような様相を呈していた。それは熱風を撒き散らしながら、一直線に前方の魔物と密集した木々へと向かって突進した。着弾と同時に、爆風が周囲を吹き飛ばし、凄まじい轟音と共に魔物と木々を一瞬にして蒸発させる。熱波と炎が通り過ぎた跡には、黒く焦げた、直線状の道が出現した。

 その焦げた道を、そらはティナの手を引いて一気に駆け抜けた。二人は猛烈な勢いで走り抜け、すぐさま眼前にそびえる岩の崖壁に辿り着いた。

 壁を背にした瞬間、作戦通り、そらが前衛、ティナが後衛を務めた。

 直後、道が開けたことで興奮した魔物たちが、黒煙を上げる焦げた道を通って、一斉に押し寄せてきた。中級クラスの魔物が五体、そしてその奥には、全身に岩のような装甲を纏った上級クラスのゴーレムが一体のっしのっしと迫ってくる。

 戦いの火蓋は切られた。

 そらは、迫り来る中級魔物たちに対し、剣を流れるように振るい始めた。剣筋は精密で速く、魔物の攻撃を最小限の動きで受け止め、無力化していく。

 「ティナ!」

 そらの短い合図と共に、後衛のティナが再度詠唱を始める。彼女は崖の壁に背中を預け、眼前の敵の群れと、その後ろでゆっくりと迫るゴーレムを鋭く見据えていた。今、彼女とそらの退路は断たれている。彼女の魔法こそが、唯一の活路だった。

 ティナは、そらの合図を受けると同時に、素早く杖を地面に向けた。彼女の魔力が大地へと流れ込み、瞬時に発動する土魔法。

 ゴオオオオッ!

 二人の左右の地面が、地響きを立てながら隆起した。巨大な岩盤が押し上げられるように、高さ数メートル、厚さも数メートルに及ぶ分厚い土の壁が、左右にせり上がっていく。まるで、峡谷が突如として生まれたかのように、魔物たちの侵入経路は正面のみへと限定された。これで、そらが目の前の魔物だけに集中していれば良くなったが、同時に二人の退路は完全に塞がれたことになる。背後には崖、左右にはティナが作り出した土壁、そして正面には殺到する魔物たち。まさに絶体絶命の状況だ。

 しかし、ティナの瞳に迷いはなかった。この状況を作り出したのは、彼女自身の戦略。この場で、全てを終わらせる覚悟を決めていた。

 そらは、土壁によって通路が狭まったことで、一気に集中砲火を浴びる形になった魔物たちを、剣一本で捌いていく。彼の剣は、流れる水のようにしなやかでありながら、鋼鉄のように重い一撃を繰り出した。中級魔物の一体が振り上げた巨大な棍棒を、そらは剣で受け流すと、その胴体を一閃。魔物の身体は真っ二つに裂かれ、血飛沫が土壁に飛び散った。

 その間にも、ティナの魔法が次々と炸裂する。

 「サンダーボルト!」

 杖の先端から放たれた稲妻が、狭い通路を走る。中級魔物の身体を貫き、感電させ、一瞬にして炭化させる。

 「アイスランス!」

 鋭利な氷の槍が、複数の魔物の身体を串刺しにする。凍り付いた魔物は、次の瞬間、粉々に砕け散った。

 そらは前衛として、ティナの魔法の射線に決して入ることなく、迫り来る魔物の攻撃を受け止め、弾き、時折カウンターで深手を負わせる。ティナは、そらの動きを完全に信頼し、迷いなく強力な攻撃魔法を放ち続けた。二人の連携は、まるで長年共に戦ってきた熟練のパーティのようだった。

 中級魔物たちは、そらの剣とティナの魔法の前に、なすすべもなく倒れていく。そして、ついに通路の奥から、岩のような巨体を持つ上級ゴーレムが姿を現した。その目は赤く光り、硬い拳を振り上げ、地響きを立てながらそらに迫る。

 「そらさん! ゴーレムは私がやります!」

 ティナの声が響き渡り、彼女の杖の先端に、再び膨大な魔力が集中し始めた。

 ティナの杖に集まる魔力は、先ほどまでの攻撃魔法とは次元が違った。青白い輝きを帯びた巨大な魔法陣が、ティナの背後の崖壁に張り付くように展開される。大地と空気が、その膨大な魔力に圧迫され、軋みを上げた。

 上級ゴーレムは、自分に向かってくる魔力の危険性を本能で察知し、その硬い腕で体を庇うような仕草を見せた。しかし、攻撃は待ってはくれなかった。

 「アースブレイク!」

 ティナが叫ぶと同時に、大地が激しく反応した。ゴーレムの足元から、マグマの熱を帯びたかのような赤黒い巨大な岩の杭が、無数に、そして猛烈な速度で突き上がった。それは、ゴーレムの分厚い装甲を突き破り、その巨体を串刺しにした。

 ガガガガッ、ゴリッ!

 硬い岩と岩が砕け合うような、耳障りな音が響き渡る。ゴーレムは、内部から破壊され、その動きを完全に止めた。全身に無数の岩の杭が突き刺さった状態で、そのまま前方に崩れ落ちる。地を揺らす激しい振動と、岩が砕ける音が、静寂を取り戻した谷に響き渡った。

 周囲の魔物の気配は、完全に消え去った。

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